中小非製造業の回復はいつ

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2004年9月号掲載

大企業と同じパスで回復できるか

 景気は、製造業を中心に回復しているが、非製造業に関しては出遅れ感が否めない。中でも中小非製造業は、日銀短観でも業況判断DIが大きく水面下に沈んだままである。景気の方向性を占う上では製造業の動向が重要であるが、景気回復の方向性が明らかになっている現時点では、製造業の好調ぶりをことさら強調することはそれほど意味のあることとは思えない。むしろ、非製造業部門の現在の姿を見ることが、今回の回復の強さや今後の持続力を見極める上で重要になってくる。とりわけ、雇用面での裾野の広がりから所得→消費回復の流れを考えると中小非製造業の景況感が回復するかどうかは非常に重要なポイントである。
 中小非製造業の回復に点火するかどうかを見極めるうえで、今回の回復を特徴付けてみよう。(1)外需の盛り上がりによる輸出系製造業の活況、(2)雇用環境の見直しによるコスト削減、(3)取引先との条件見直しによるコスト削減、等が今回の大企業を中心とした回復の源泉となっている。中小非製造にとって(1)の恩恵を享受できる要素は低く、(2)や(3)といった大企業がある程度すばやく対応した分野にこれからでも着手できるかどうかがカギとなる。しかし、これまで手をつけられなかった部分に手を着けるとなると、大企業とは違った問題も出てくる。ほとんどの中小企業であれば、社長は従業員の顔はおろか、場合によっては家族の顔まで思い浮かべることができるだろうし、取引先の企業は人縁地縁でさまざまに結びついているかもしれない。また、取引条件の見直しを迫れる相手を持っていない可能性も高い。こうしてみると、大企業的な調整が収益回復に結びつく度合いは小さいかもしれない。

需要不足の環境下での構造調整の是非

 別の観点から中小非製造業の低迷を見てみると、政策不況的な要素が強いことに気付く。中小非製造業の景況感が改善しないのは、建設、小売、飲食サービスの3業種の低迷が大きく影響しているからである。いうまでもなく、建設業の低迷は公共投資の大幅削減と競争促進策であり、小売、飲食サービスの低迷には自由化が影響している。これらの業種は、効率性が劣る業種であり、競争に耐えられない業者は、なくてもいいとの議論もまかり通る有様である。
 「経済の効率化のために自由化や競争促進策が不可欠である」との主張に真っ向から反論する人は少ないだろうが、「圧倒的に需要が不足する中で」との条件をつけたらどうであろう。需要が不足する中で、自由化や競争促進策を推し進めればデフレ圧力になる可能性が非常に高いが、国や地方自治体はこの時期に構造改革を行っている。中小非製造業の低迷にはこのような要因も大きく影響していることを忘れてはならない。
 もちろん、自社の回復のためにはミクロレベルでの企業努力が不可欠であり、他社と差別化できない企業は生き残れないのは当然のことである。しかし、政策として企業の淘汰を後押しするという考え方が、個別業種や個別主体の効率化ではなく、経済全体の効率化にプラスになるのかは疑わしい。そもそも、供給面でのボトルネックが存在するときに自由化による効率性を議論することは大いに意味があるのだが、現局面で議論することにどれほどの意味があるのだろうか?