景気の持続力を占う

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2004年11月号掲載

すそ野の広がりが不可欠

景気回復のトップランナーを走ってきた電子関連部品の勢いに陰りが見られることなどから、景気の先行きに対して懐疑的な見方が広まってきた。これまで景気を引っ張ってきた大企業製造業だけの頑張りでは全体を牽引するには荷が重過ぎるのだ。鉱工業生産指数の動きから判断しても、景気の方向性はこれまでの好調持続とはいかないようだ。方向性には変化が見え始めた。では持続力はどうか。
90年代以降の景気回復局面の中では、企業の収益面や投資の動きなどから見て持続力に期待が持てる。また、これまで大きな重石となっていた不良債権問題も山場を越した。都心の地価は底を打ち、資産デフレの長いトンネルにも、かすかに出口の光が見え始めた。これらの事から今回の回復は、以外に底堅いのではないかという意見も数多い。これまで自信を失ってきた日本経済も、どん底から這い上がり、次のステップに駆け上がる時が来たというのだ。
失われた10年の間に、経済は、萎縮してしまった。回復をイメージすることすらできない状況にも陥っていたかもしれない。その延長線上で悲観論に与することは非常に危険である。しかし、大企業における好調の事象に目を奪われて、希望的観測をもって全体の動きを見誤ってしまうことはもっと危険である。景気持続の本質は、すそ野の広がりである。そこで重要になってくるのが中小企業の動向にきちんと目を配ることである。中小企業の就業者は、全体の就業者の約6割を占める。言い換えれば、消費者の6割は中小企業から賃金を受け取っている。消費回復の持続性には、この層の動向が大きく影響するのである。

二極化論で片付けるのは危険

一方で、今回の景気回復の特徴は、二極化であり、良いところは良い、悪いところは悪いのは当然である。格差が出るのは企業努力の差なのだから、仕方がない。中小企業は、生産性の向上にもっと取り組むべきだとの議論を耳にする。確かに、競争原理から言ってもっともな話であり、わかりやすいだけに説得力もある。しかし、現実はそれほど単純なものではない。
中小企業を取り巻く環境は、実際には一握りの勝ち組と、一握りの負け組、そして大多数のどちらにも属さない組から構成されている。どちらにも属さない組は、日々勝ち組になるべく多種多様な戦略をもって這い上がろうとしている。徹底してプロの下請けに徹するもの、ニッチ分野で自分の強みを発揮しようとするもの、独自の顧客サービスを実践しているもの、陽の目が当たらないかもしれない独自の技術開発を粛々と行っているもの、単純に説明できないけど検討しているもの等様々である。二極化ではなく多極化の様相である。
勝ち組以外の企業は、経済のお荷物であり市場から退出するべきだという意見は、大変危険であり、将来の成長の芽を摘んでしまうものである。世間を驚かせる新技術や新しいビジネスモデルは、事前に予見できるものではない。誰にでも可能性はあるし、誰もその可能性を事前につぶすことはできないのである。どちらでもない組の努力が実る環境が整ったとき、すそ野の広がりが見られるのではなかろうか。