目指せ中小企業立国

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2005年2月号掲載

中小企業は後退期

いくつかの経済指標が弱含むなかで、すでに景気後退期に入ったのではないかという意見と、そうではなく、景気は踊り場にあり、すぐ成長軌道に戻るという意見が対立している。ここでいう景気判断とは、幅広く一般的な景気判断であり、政府の月例経済報告や景気基準日付に代表される景気判断である。言い換えれば、一国の経済活動を統計的に集計した結果がどちらを向いているかという議論である。いうまでもなく、マクロの経済を分析し、財政政策や金融政策を策定する上での大前提として非常に重要な議論である。
しかしながら、逆に財政政策や金融政策を策定しない主体にとっては、それほど重要な議論ではない。乱暴な言い方をすれば、景気後退でも踊り場でも、どちらでもあまり良くないことには違いないのだ。少なくとも、本書の大多数の読者であろう中小企業に関連する主体に関して言えば、ここにきて、景気の裾野が広がりを見せていないことは、景気後退と同義だと認識する必要があろう。
高度成長期やバブル期においては、高成長のなかですべての主体が同じ方向を向く傾向があったが、コンマ何パーセントを議論する低成長のもとでは、必然的に、いいところもあれば悪いところもある二極化、多極化の動きが見られることになる。
以前にもこのコーナーで書いたが、景気判断をどの立場で行うかの軸足がこの時期非常に大切である。経済政策を議論するのか、株価に代表されるマーケットに軸足を置くのか、あるいは国内の消費動向なのか?自分の会社の売れ行きなのか?一般論としての景気判断は、どの場面でも通用するものではなさそうである。

成長の原動力は中小企業にあり

中小企業経営者の多くは、中小企業を取り巻く環境は厳しく、景気後退期と同等の認識が必要との考えを持っていると思われる。一方で、景気は全体としては回復傾向で、中小企業が悪くても経済に対する影響は限定されるとの意見も聞かれる。いわゆる中小企業切捨て論とも取れる考え方である。中小企業の経済に対する影響力を考えればそうかもしれないが、その考えは静的な視点からのものでしかない。つまり、現在の大企業は、昔から大企業だったとも限らないのだ。
これまでの経済発展の中で、中小企業から大企業へと変貌を遂げた会社を挙げれば枚挙に暇がないであろう。現在の静的な状況から判断した中小企業切捨て論は、成長の原動力を切り捨てることと同じなのである。
楽観的な景気判断のもとで財政が引き締められ、金利が上げられれば中小企業を直撃することは目に見えている。体力的な競争では、中小企業に勝ち目はないが、大企業にないユニークな視点を持っている中小企業は数多い。どのビジネスモデルが成功するかは誰にもわからないし、誰にもわからないから、成功もするのである。中小企業と比べて大企業や政策当局にその成功を見極める力が圧倒的に勝っているとは考えられないのである。決して成長の原動力をつぶしてはならない。
2005年こそ中小企業立国を目指す年になって欲しいものである。