中小企業の活力を引き出すには

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2005年7月号掲載

広がる温度差

景気見通しについて、2005年前半に回復に転じるといった一時期ほどの楽観的な見方は後退したが、依然として中小企業経営者の感覚との間には、ずれがあるように思える。多くの景気見通しは、年内に景気は回復すると見ているが、感覚的に回復の糸口を見出せないでいるのだ。
実際に、新聞報道や政府の景気判断は、「踊り場」であるとか「回復のテンポが鈍っている」という表現で昨年夏場以降の景気の状況を表現しているが、一般の人たちには非常にあいまいでわかりにくい表現と言えるかもしれない。【踊り場】は、階段の中途を広くして、足休めとしたところ(広辞苑)だが、景気用語で使われる場合には、調整局面というよりは回復期における短期間のあやのような意味で使われているようだ。
中小企業に限った景気動向の調査では、多くの調査が昨年の夏場以降の景気は、調整局面であることを示している。そして、経営者は感覚としてそのことを感じ取っていたに違いない。まさに、そこにずれの原因があるのかもしれない。特に地方経済の疲弊は、小売業や建設業の不振を見れば明らかなように非常に難しい問題を内包している。もっとも、大企業をめぐる環境だけ取り出せば、収益面や雇用意欲、設備投資計画等、明るい要素も多い。また、大都市部では、不動産価格も上昇に転じ、ディベロッパーの開発意欲も旺盛である。大企業と中小企業、大都市部と地方の温度差が広がっており、そのことが感覚のずれや景気判断のわかりにくさにつながっているのだ。

中小企業活性化が力強い成長をもたらす

現在、予想以上に景気の足取りが重く感じるのは、おそらくこの大きく広がりつつある温度差を軽視しているからではなかろうか?経済分析をする上で多く用いられる手法として、過去のデータの相関関係を分析して将来の予測に用いるという方法がある。この方法は、いうなれば大企業と中小企業の関係、都市部から地方への波及メカニズムは、変化なしとして予測しているわけだ。これまで大企業の動向だけを見ていれば全体像が見えていたものが、そうではなくなってきている可能性を考えなくてはならないかもしれない。
大企業という一部のセクター、大都市部という一部の地域が加速することで、一定の景気浮揚効果は見られたものの、全体の足取りは総じて重たいというのが現状であろう。であれば、今後重要になってくるのは、中小企業や地方経済の建て直しである。
ここで注意しなくてはならないのは、単なる補助金の給付や保護政策でお茶を濁すのではなく、その地域にとってあるいはその規模の会社にとって持続可能な方法を見出すことである。単純な保護政策は、セーフティネットとして時間的猶予を与える意味では有効だが、本質的な建て直しには効果はのぞみにくい。そればかりか、その対象を衰退させる危険性すらある。
一定の競争が前提とされている経済である以上、各企業の主体的な取り組みによる活性化が望まれる。しかし、ルールが未整備な中での自由な競争は、公正な競争とはなりえない。勝者への一極集中は、全体にゆがみをもたらす。地域振興の観点、企業育成の観点から、一定の制限を設けた競争のフィールドを整備することが、中小企業の活性化に結びつくのではなかろうか。