経済構造の変化と中小企業

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2005年10月号掲載

調整の進展のなかで

景気は、踊り場を脱しつつあるというのが、一般的な評価であるが、地方の中小企業の状況は、それほど楽観できる状況ではない。回復の糸口は見えたものの、これが順調に回復に結びつくか見極めが難しい状況である。
先月の本稿でも述べたように、中小企業は、大企業が景気の踊り場にある中、一周遅れで最後の調整を行っている。雇用面、設備面での調整を時間が解決する形で行っているのだ。十分とはいえないまでも、確実に調整を進め、次の回復につなげようとしている。
しかし、循環的な調整が最終段階を迎えるなかで、いくつかの課題も浮き彫りになってきた。一つは、原油価格の上昇に伴う各種原材料コストの上昇と交易条件の悪化である。企業間取引の場合、価格への転嫁には、企業間の力関係が影響することもしばしばである。納入先の大企業が価格値上げに応じてくれず、利ざやの縮小に悩んでいる中小企業は少なくない。二つ目は、急速な労働需給の引き締まりに伴う人材不足である。これまで人を減らすことに腐心していた大企業がこぞって採用を増やし始めた。優秀な人材が中小企業に流れにくくなってきたとの声が大きくなっている。三つ目は、中小企業を取り巻く競争環境の変化である。米国式の「勝ったものがすべてを得る」という考えが浸透し始め、容赦なく、より厳しい競争が繰り広げられることが多くなってきた。

競争条件の整備が不可欠

三つの問題とも、環境の変化であり、受け入れざるを得ない問題のようにも見えるが、競争の前提が変われば状況は変わってくる可能性がある。特に、三つ目の問題については、経済構造改革との関連で考える必要がある。
米国型の競争主義に基づく経済運営は、市場の力を最大限に生かし、経済を効率的にすることを目指す。生産性の低い産業や企業には市場から退出していただき、最終的に生産性の高い企業群だけで成り立つことを目指す。中小企業は、大企業よりも生産性は劣り、結果的に国全体の生産性を下げることになっている。よって、生産性の低い中小企業をなくせば、国全体の生産性は上昇し、国は豊かになる。つまり、大企業に有利な運営をすることで経済は効率化できる。
一見この主張は、極端ではあるにせよ、正しいかに見える。しかし、物事を静的にしか見ていない。中小企業の生産性は平均値を取れば、大企業よりも低いかもしれないが、中には非常に高い生産性を示す中小企業がある。さらに、現在、非常に生産性が低い会社がブレイクスルーすることで、明日には高生産性を誇る会社になっているかもしれない。いうなれば、今できの悪い生徒は、将来もできの悪い生徒とは限らないのだ。中小企業が大企業に育っていく過程こそが経済のダイナミズムであり、現在の多くの大企業も、かつての中小企業である。
市場を効率的に運営するためには、ルールの整備が不可欠であることは、証券市場の例を見ても明らかである。ただ単に現在強いものが生き残るというのでは、効率的な市場は望めない。公正な競争を行う環境整備が行われて、初めて市場の力を生かせるのであり、競争する上でのルールの整備と実際の運用が何よりも重要になってくる。