差別化できていますか?

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2005年11月号掲載

今こそ改めて意識してみる

先日発表された日銀短観によれば、景況感の回復は緩やかではあるものの着実なものであるという評価ができる。株式市場の活況は、完全に景気の回復を前提としている。もっとも、原油価格の問題は、大きなリスク要因として残り、先行きの不安材料とはなっている。しかし、むしろ興味深いのは、中小企業の景況感が、いまだに回復感を自分達の問題として実感できていないことであろう。やはり、これまでの回復とはかなり趣が異なるのだ。
今回の景気回復ほど、良いところと悪いところの格差が大きい事はなかったように思える。平均値付近に多くの企業が集中するのではなく、良いところと悪いところがばらついた上で、どこの部分を統計サンプルに多く含むかによって、統計上の結果も大きく異なるケースも見られる。
たとえば、中小企業の景況感を測る調査でもサンプルの癖によって結果には大きな差異が見られた。日銀短観のサンプル企業と中小企業基盤整備機構の景況調査のサンプル企業では、規模的なものとウエイト付けがかなり異なる。このことは、中小企業白書の中にでもふれられていた点だが、中小企業間での景況感格差を如実に示している例といえよう。
どこからその格差は出てくるのであろうか。中小企業の経営者は、今こそ改めて自分の業態や自分の企業規模の中でどのような位置にあるのか、そのなかでどの分野で差別化ができているのかを見直してみる必要がある。

儲かる仕組みとして機能させる

今回の景気回復が20世紀後半に見られた一般的な景気回復と決定的に違うのは、このばらつきであり差異であり差別化である。大量生産時代に求められた均質性や類似性とは対極にあるものかもしれない。回復感を実感できない理由は、いくつかあるにせよ、マクロ的な環境が及ぼす要因と自助努力でまかなわなければならない部分を冷静に見極めて行動しなければならない。
これまでと同じやり方をして儲からないのであれば、何かを変えなければならないはずである。それが抜本的な改革である必要は必ずしもない。何か小さな工夫が他との差別化につながり、儲かる仕組みとして機能する可能性は高い。むしろ、やみくもに、変える事だけが優先される風潮の中で、自分たちの本当の強みを理解し、そこに経営資源を集中することこそが、真の改革と言えるかもしれない。うわべだけの改革は、他社との類似性をもたらすことになりかねず、結果的に付け焼刃の改革は機能しないということになる。
最も重要なことは、自分たちの儲かる仕組みを自覚することである。儲かるかどうかわからないことをやり続けることは、何もしていないようで、何もしないよりも悪い。自分たちのスタイルを見つけるために、いくつかの試行錯誤は必要かもしれないが、意識して工夫をするところからしか何も生まれない。どんな企業でも他の会社が持っていない良いものを持っているはずである。それを生かすも殺すも、経営者次第である。中小企業の経営者は、毎日でも「差別化を図る努力をしているか」と自問自答してみる必要があるかもしれない。何も考えずに今のやり方を続けるだけでは、いつまでたっても景気回復はやってこない。