中小企業の成長モデルとは

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2005年12月号掲載

一周遅れの回復を軌道に

日本経済は、設備投資の堅調さに支えられ、個人消費にも明るさが見えることで踊り場を脱したと考えられる。中小企業の景況感も大企業ほどではないにしても底打ち感が明らかになってきた。大企業が踊り場にいる間、中小企業は調整局面に近い状況にあったが、ここでの最後の調整が景況感の回復に結びついた形だ。
そうは言っても、多くの中小企業が回復を実感できているかというとそうではない。本稿でも再三述べているように、回復感には格差があり、かつ、もともとの水準が低いため方向性が多少上向いても、それを回復と実感できる状況までは至っていないのである。
それでは、中小企業の回復を軌道に乗せるためにはどのようなことが必要なのだろうか。そのためには今回の回復の特徴をもう一度見直してみる必要がある。第一に、中国を中心とした海外の需要にどれだけ応えられたか、第二に、国内需要に対しては、多様な価値観に対応すべく決め細やかなサービスの提供ができたか。第三に既存の枠組みにとらわれない新しいやり方に対応できたかである。

成長モデルを意識するか否か

第一の点に関しては、単純に海外とのビジネスに興味があるか、進出するかしないかでおのずと結果は決まってしまう。また、中小非製造業の分野は、国内市場のウエイトが高く、そもそも海外市場を意識すること自体があまりないかもしれない。
第二の点に関しては、まさに今回の成長の本質と言っても過言ではないかもしれない。つまり、過去の大量生産大量消費型の成長モデルから多品種小ロット型への移行が行われ、その対応如何によって結果に差が出たということである。中小企業とて例外ではなく、これまで大量生産型モデルの一部として下請けとして組み込まれてきた立場が必ずしも絶対ではなくなったという事実がこれを示している。
これまでは、絶対的なモノの供給力で勝負がついてきた世界が、アイデア次第で攻守入れ替わる可能性があるということが示された。このことはネット系企業の躍進の例を挙げるまでもなく、多くの分野で見られることである。そして、このことは多くの中小企業にまだまだチャンスがあることを示している。
第三の点に関しては、公共事業を中心とした建設業の成長モデルが根底から変化を強いられた事を思い浮かべるとわかりやすい。行政のあり方も変わり、これまで当たり前とされた慣行や意思決定のメカニズムが変わった。ここでは、実際に自分たちが変わるかどうかの以前の問題として、変わったことを認識できる力が最も重要であった。
共通して言えることは、自らの成長モデルを意識して動いているかどうかで今回の回復に乗れるか否かが決まってしまうということである。かつての大企業の体質だけは見習ってしまった中小企業には、景気回復の恩恵はいくらたってもめぐってこないかもしれない。