中小企業金融を考える(1)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年1月号掲載

効率化は効果的か

政府系金融機関の見直し論議が盛んだが、ここでは、政府系の中小企業向け金融について考えてみたい。一部の金融機関の民営化や統合は、主に効率化、すなわち行政としてのコストの削減を主眼に置いた議論と言える。しかし、効率化することが経済にとって効果的かどうかはそのやり方によって変わってくる。これまで政府系金融機関が経済に対してプラスの効果を与えていた部分をそぎとって、行政コストの削減を達成したとしても、差し引きで一国経済にとってマイナスの影響を与えたのでは本末転倒となってしまう。
政府部門の収支は、問題点としてわかりやすく、政府支出の削減が即効性を持つため支持を受けやすい。一方で、現在所与である政府部門サービスの効果は、失って初めてその大きさがわかるもので、今現在明確に見えているものではない。政府系金融機関の役割とは、民間金融機関のみで運営された場合に起こりうる「市場の失敗」を回避することにある。どれだけの「市場の失敗」を回避できてきたかは、あくまで推測の域を超えられず、説得力に乏しい。
しかし実際には、民間金融機関から融資を断られたにもかかわらず、政府系金融機関の助けで事業を存続あるいは拡張した企業は多い。その企業が果たしている雇用を初めとする経済的貢献こそが政府系金融機関の効果だとすれば、その大きさは非常に大きなものになる可能性がある。効率化と機能維持が両立するのであれば望ましいことであるが、効率性の議論以上に、機能維持の議論が優先されるべきである。

中小企業向け金融のリスク

中小企業金融の機能を議論するにあたって、まず中小企業金融の特徴を考えてみよう。個別の中小企業の多くは、必ずしも財務基盤が磐石ではなく、一般論として財務上の安定度は大企業に劣るケースが多い。仮に財務上の安定度を第一番目の優先項目として考えた場合、銀行から見れば貸せるところがないという状況にもなりかねない。
加えて、中小企業は、ショックに弱い。仮に数十年にわたって順調に推移していた会社であっても、予期せぬ状況から急速に財務状況が悪化することはよくあることである。大企業に比べてリスクに対する許容度が低いのである。つまり、市場の分散化、商品の分散化等のリスク分散が十分に行われていないのだ。また、社内体制的にも、大企業のように経営者人材の層が厚くないことが一般的である。このように、個別の中小企業と大企業を比べれば、中小企業向けの貸し出しはリスクが高くなるのは当然の帰結とも言える。民間金融機関は、より高いリスクの貸し出しにはより高い金利の貸し出し、あるいは貸し出しができないということになる。
しかし一方で、中小企業向け貸し出しの特徴として、当然のことながらロットが小さいということが挙げられる。個別企業だけを見ればリスクが非常に高くても、いくつかの企業をまとめることで、そのリスクが軽減される可能性はある。同じ100億円を1社に貸すときと1億づつ100社に貸すときの例を考えるとわかりやすい。個別の企業が持っているリスクを協同組合金融等の方法を使ってヘッジしているのが、中小企業金融なのである。