中小企業金融を考える(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年2月号掲載

社会的に意義のある機能

前回の本稿で中小企業金融の特徴として、個別企業のリスクは大企業と比べて総じて高いものの貸し出しロットが小さいこともあり、多くの企業に分散した貸し出しを行うことにより、リスクを軽減できる点を挙げた。このことは、中小企業金融の本質であり、社会的に見ても高リスク企業群の低リスク化という意義のある機能といえる。この機能により、中小企業に十分な資金が行き渡り、将来の優良企業が生まれる可能性が高まり、伝統的企業が生き残ることが可能になるのである。
ちなみに、収益力が弱い企業は市場から退出すべきとの意見を耳にすることがあるが、地方の現状から考えると、まったくナンセンスな議論である。地域の雇用や地域の文化的発展、その地方らしさを守り続けるためには、収益力が決して高くなくとも必要な企業は数多くある。地方の独自性をないがしろにし、経済的効率性だけを追い求めた結果にやってくる弊害は、すでに中心市街地の衰退等に見ることができる。
さて、この中小企業金融の機能であるが、リスクを低減できるのであれば、民間でも十分やっていけるのではないかという議論が当然出てくるであろう。実際に、地方銀行の多くはこの機能を果たしていると考えられる。しかし、それが十分かという点では意見が分かれるのではなかろうか。問題は、情報収集コストである。ロットが小さければ小さいほど、情報収集にかけられるコストは限られてくる。ここに市場主義だけではうまく行かない「市場の失敗」が生まれる余地が残っているのである。

長期的視野に立ったよき相談相手

情報収集コストの存在は、また情報の非対称性をもたらす。すなわち、資金の出し手と資金の受けての情報交換が十分ではなくなる要因として働く。ここに、中小企業金融が間接金融中心に行われる理由がある。投資家の立場に立てば、情報が一般にそれほど開示されていない中小企業の内容を分析することは困難であり、中小企業にしてみれば、情報を広く開示するだけのコストを負担することは難しい。間接金融の担い手である銀行は、一般に公開されていない個別の企業に対しての情報を得ることができる。コストをかけて、その企業に対してのプロになっているわけである。
金融自由化の流れの中で、あたかも直接金融こそが正で、間接金融を修正すべきとの意見も聞かれる。しかし、たまたまアメリカでの直接金融の割合が高いことが、日本において現状の間接金融の枠組みを変える理由にはならない。安定した資金供給を望む企業にとっては、敵対的資本政策をケアしてまで、直接市場から資金を調達しなくてもいいのである。
中小企業の多くは、財務的に必ずしも強いとは言えないケースが多く、市場環境の変化に弱いことは前回も述べた。だからこそ、長期的な視野に立ったよき相談相手としての資金の出し手が必要なのである。長期的な関係に基づく継続的な融資は、あたかもエクイティのようである。この擬似エクイティとも呼ぶことができる部分が、日本の中小企業を支えているといっても過言ではない。たとえ逃げ足が速くとも、瞬時に大量の資金を望む企業は株式を公開すればよい。そうでない企業にとっては、これまでの中小企業金融の枠組みが非常に有効なのである。