中小企業金融を考える(3)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年3月号掲載

中小企業金融の特徴と役割

前回までの本稿で、中小企業金融の特徴と役割・機能について述べてきた。簡単におさらいすると、中小企業金融の特徴として、一般的に個別企業のリスクは高く、そして貸し出しロットは小さいことが挙げられる。そのため、十分に分散投資をすることでリスクの低減を図る必要が出てくる。また、ロットが小さいため、情報収集コストが割高になる可能性が高く、この割高な情報収集コストが原因で市場の失敗を引き起こす可能性がある。ここで言う市場の失敗とは、資金の借り手と資金の出し手との間の仲介機能がうまく働かずに、経済全体の成長のために本来必要な資金が流れない状況のことである。
このような特徴をもった中小企業金融に対して、政府系の金融機関を中心とする中小企業向け金融機関は、次のような役割を担ってきた。まず、組合金融や制度融資を通して、多くの中小企業向けに安定した資金を供給するとともに、高リスク企業群のリスク低減という社会的機能を果たしている。もちろん、民間銀行もこの役割を果たしているが、行政機関や組合等を通じて収集した情報と民間独自に収集した情報との間には情報の質に違いがでてしまう可能性がある。長年にわたってその業界や業種に精通した担当者を置き、引継ぎがなされた結果の情報は、貸し手にとってもコストに見合う付加価値が高い情報となり得る。また同時に、借り手にとっても自社をよく理解してくれているパートナーとしての役割を期待できることにもなるのである。市場の論理に任せた場合、特に短期的な視野からは割高な情報収集コストばかりが目立つことになりがちである。金融機関の状況によっては、長期的な視点よりも短期的な結果が求められることは十分考えられる。雨が降ったときに傘をはずされた経験を持つ中小企業経営者は少なくない。

中小企業の必要性と金融の役割

中小企業金融は、直接金融市場における短期的かつ大量の資金移動とは対照的に、長期的な信頼関係のうえに成り立ち、短期的には高い情報収集コストの存在が障壁になる。逆に言えば、高い情報収集コストを吸収できるだけの長期的な信頼関係が確立されれば、政府系であろうが民間であろうが成り立つという議論もできる。重要なのは、ある業界や業種における中小企業の現状を的確に把握し、理解できる担当者の存在であり、組織としてその情報を生かしきるかどうかである。政府系金融機関の存在意義は、まさにこの点にあるのである。
民営化・再編され、この機能が維持されるのであれば、中小企業経営者として何も心配することはない。ただし、本音ベースでは、決して万能とは言いがたい「市場」とやらにゆだねて、これらの機能が維持されるのかは、多いに疑問が残るところであろう。今後の議論において、機能維持の部分が焦点になろうが、どのように機能が維持されるかについては、しっかり担保していただきたいものである。
中小企業が必要ないというのであれば、中小企業金融も必要ない。しかし、中小企業の活性化が本当に必要だと考えているのであれば、その意思を明確な形で示してもらいたいというのが中小企業経営者の偽らざる声である。