経済格差問題を考える

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年4月号掲載

マクロ的に認められないというが

世論調査等において、地域間格差や業種間格差が近年拡大していると思う人が多い、との調査結果が出された。現在の経済情勢からすれば、そう感じることはうなずけることであるが、政府のコメントは、「格差拡大の問題について、マクロ数値において格差は認められない」というものである。この問題が政府の構造改革の結果というかたちで出てきたために、それに対しての反論という意味合いもあるだろうが、地方の方や中小企業に関わる方々はかなり違和感を覚えたのではなかろうか。
言うまでもなく、今回の景気回復の特徴は、二極化である。中央と地方、大企業と中小企業の間の格差が拡大した事については、多くの経済指標が物語っている。景況感をたずねる調査では、日銀短観をはじめ多くの調査で大企業と中小企業の格差拡大を示しているし、各地方間でのばらつきも日銀支店長会議のコメントから容易に読み取れるはずである。
マクロの経済指標を見ても、所得と直接的な関係を持つ雇用関係の指標において、明確な差違が認められる。全国の有効求人倍率は、1を上回ったが(平成17年12月)、このときの北海道の数値は0.62、東京は1.50である。
仮に、精緻な分析や統計処理を施した結果、格差が拡大していないことを政府が主張したとしても、感覚のずれを露呈すること以外には意味を持たないことになるだろう。

格差の存在を直視するところから

そのことを意識してか、格差そのものがないという論調から、「格差はどんな社会にも、どんな国にも存在する」「格差が出ることは悪いこととは思っていない」という論調にシフトしてきている。
実際にそのような政策運営を行ってきたのだから、まさにこちらが本音と言うべきだろうが、経済運営の基本を考える上で議論が必要な部分ではある。
そもそも、短期的に経済の効率を優先すれば一極集中することは自明の理とも言える。無駄をはぶくことは、集中化であり、分散化することとは対極にある。効率を優先するなかでは、公正なルールであるか否かを問わず、ある一定地域に集中する可能性は高いと言える。かつての日本もそうだったように、経済成長を優先する発展途上国でも同様に都市部へのヒト・モノ・カネの集中が見られる。ある一定の過去にさかのぼれば、日本においても格差が存在したことを立証することは難しいことではない。
その意味で、この問題は古くて新しい問題ということも言える。政治的な問題としてとられがちなこの問題も、長期的には経済問題である。つまり、一極集中の経済的弊害は短期的には認識されにくく、長期的には大きな問題になりうる。この点については次回詳しく述べることとする。
問題なのは、多くの人が効率を優先した一極集中型の経済運営を選択した自覚がないまま、着実にその道を歩んでいることである。本当に効率だけを求める経済が豊かな経済か、十分な議論が必要である。
統計上の数字の解釈はともかく、格差の存在を直視するところからしかこの議論は始まらない。