シリーズ 中小企業にできること・金融編(1)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年7月号掲載

中小企業の立場とは

これまでこのコーナーの中で筆者自身のことについて触れることはなかったが、より具体性を持った形で中小企業問題を掘り下げていくために、多少筆者自身のことについて紹介させていただきたい。まず、読者の皆さんにお伝えしたいのは、私自身が中小企業の経営者であるということである。読者の皆さんの中にも中小企業の経営に関わっている方は大勢いらっしゃると思うが、これまで以上に、等身大の中小企業経営者の目線を重視して議論を進めていきたい。その意味では、ここでの主張は、中小企業の立場そのものであって、誰かが中小企業の立場を推測して語っているものではないことを強調しておきたい。その中小企業の社長が、なぜ客員研究員なのか?理由は簡単で、私自身が当研究所のOBだからである。
前置きが長くなってしまったが、これまでは、中小企業を客観的に見る視点を重視してきたが、今後は、中小企業そのものの視点で議論を進めさせていただくので、特に中小企業を経営されている方、または関連されている方は、ご意見やご感想をお寄せいただき、議論が深まるお手伝いをしていただければ幸いである。

信頼関係は双方の努力から

さて、早速、中小企業を取り巻く問題を考えていくわけであるが、大きなテーマとしては、中小企業が発展・成長していくためには何が必要かということを議論していきたい。そして、そのためには、中小企業自身とそれを取り巻く様々な主体が、どうすればよいのかについて考えなければならない。まずは、我々中小企業が最低限自助努力としてやらなければならないこと、そして我々ができることを考えていこう。
第1回目は、金融の面についてである。中小企業を取り巻く金融環境はひところに比べれば平穏さを取り戻してはいるが、問題がすべて解決したわけではない。むしろ問題が大きくないこのような時期にこそ、敢えて我々が取り組まなければならない問題を抽出し、解決していかなければならない。
貸し渋り・貸し剥しという言葉が新聞紙上を賑わせたことは記憶に新しいが、今ではほとんど貸し渋りが話題に上がることはない。しかし、問題が解決したかのように見えるのは、もっぱら銀行サイドの事情によるところが大きい。つまり、不良債権問題に解決の道筋がついたことにより、貸し渋りも息を潜めているのだ。もし、中小企業の側に大きな改善が見られなければ、仮に再び似たような状況に陥ったとき、同じような危機が起きる可能性はある。一般的には、銀行の問題と捉えられがちなこの問題を中小企業の問題として考えてみよう。
いざというときに、貸し渋りにあわないために、我々ができること、そして我々がやらなければいけないことは、銀行との信頼関係を築くことである。当たり前のことのように思えるが、信頼関係を築くために具体的な努力をしているか、といった観点で見た場合、多くの企業にとって改善の余地はまだあるはずである。信頼関係を築くための具体的にやらなければいけないことについて、次回詳しく見ていこう。