シリーズ 中小企業にできること・金融編(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年8月号掲載

味方につける

「雨が降ったら傘を取り上げられた・・・」窮地に追い込まれた中小企業経営者は、銀行に対しての恨み節を語る。あと少しで資金繰りにめどがついたのにと。
中小企業の経営の安定度は、一般的に高くなく事業をやっていれば波風にあおられてピンチに遭遇することは、間々あることである。そのような状況下では、銀行のさじ加減一つで会社はよみがえりもし、つぶれもする。だからこそ、金融機関との信頼関係を築くことは非常に重要なのである。
そんなことは当たり前だと言われるかもしれないが、本当に信頼関係が築かれていれば、冒頭のような恨み節は聞こえてこないはずである。しかし、現実には銀行の融資を打ち切られる企業は、なくならない。もちろん、これは企業側だけの問題でもなければ銀行だけの問題でもない。
そこで、我々中小企業にできることである。銀行を味方につけるために何をすべきか。ひと言でいえば、情報開示(ディスクロージャー)である。もちろん、大企業のように広く一般に開示する必要はない。関係が深い金融機関に、丁寧に情報開示するのである。ポイントを挙げると、第一に、財務諸表の数字は、定期的に報告することである。どうせ求められるものなので、言われる前に社長自らが報告するのである。第二に、数字の変化については、意図したものなのか、意図せざるものなのかを明確にした上で、原因と見通しを示すことである。なぜ、売り上げが増えたのか、なぜ経費が増えたのか等である。第三に、わからないことがあれば、素直に相談することである。制度融資や保証の仕組みなど、以外に中小企業経営者が知らないことはあるものである。最後に非常に重要なポイントであるが、決して数字を偽ってはいけない。銀行に良く思われようと数字をいじってみたところで、多くの場合はすぐに見破られてしまうだろうし、すぐにわからないまでも、いずれごまかしは続かない。銀行の信頼を失うことうけあいである。

よく学びよく相談する

これらのポイントを抑えても銀行との信頼関係が築けなければ、それは、よっぽど気が合わないということもあるので、他の銀行をあたることも考えなければならない。場合によっては、銀行の担当者の問題というケースもあるので、のっぴきならない状態になる前にしっかりした関係を築くことである。あくまでも双方の問題ということを念頭に。
いずれにしても、銀行との良好なコミュニケーションを図るためには、経営者も多くを学ばなければならない。会社の数字を説明できないでは、済まされないのはもちろんのこと、国の政策も、明確に方向性を変化させている。つまり、これまですべての中小企業に手を差し伸べていたものが、「やる気と能力のある中小企業の支援」というように変わってきているのだ。
ただじっとしていても、支援は受けられない。例えば、中小企業経営革新法の枠組みを使えば、低利の融資等を受けることが可能だが、これは事前に経営計画を立案し、申請、承認されたものに認められる枠組みである。熱心に変えたいと思っているものだけが手を差し伸べてもらえるのである。筆者の知人もこの枠組みを使って思い切った設備投資を行った。これらの枠組みについては、公的金融機関の担当者に相談すれば必ず教えてもらえる仕組みである。知らなかったと歯ぎしりをする前に、よく学びよく相談したか振り返ってみよう。本気で取り組めば、決して敷居は高くない。