シリーズ 中小企業にできること・人材編(1)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年9月号掲載

いい人材をお探しですか

中小企業は、人材が不足しているとよく言われる。優秀な人材は、大企業にもっていかれて中小にはまわってこないというわけだ。確かに、学歴で見れば大企業にかなわないケースが多い。しかし、中小企業の経営者に、どんな人材が必要ですかと聞けば「必ずしも学歴ではない」と十中八九返ってくる。それでは、とさらに聞けば、「やる気があり、粘り強く、前向きで自主的、創造的に仕事をする人」などと返ってくる。なるほど、そのような人材は大手でもなかなかつかまらない人材である。それで、人材が不足しているなどと言っているようでは、永遠にその会社の人材は充足されないと思ったほうが良いだろう。ここでの例は極端な例としても、漠然と「いい人材」を待っていてもなかなか見つかるものではないのである。
中小企業にできることは、自社にとって必要な人材がどのような人材かを明確にすることである。決して、一般的には「いい人材」ではなくとも、自社のその部署で必要なものを持っているかが重要になってくる。知り合いの工場には、一見無愛想な職員がいる。前向きに仕事に取り組む姿勢をアピールできそうもないタイプで、お世辞にも社交的とはいい難い。しかし、いったん機械に向き合うと抜群の力を発揮するのだそうだ。
逆に、必要な人材像が明確でないまま「いい人材」が(間違って)きてしまったらどうだろう。本当に優秀ですべて自分で切り開くのであれば別だが、ミッションが不明確で自分には役不足と感じれば、いずれ去っていくことになろう。
必要な人材像が明確になっているか、もう一度社内を見渡してみよう。本当に自分の会社には人材が不足しているだろうか?もう一度、具体的に必要な人材像を示してみてください。その真意を理解すれば、既存の社員が自社にとって最高の人材に育つ可能性が高いのではなかろうか。大企業は、人材を取捨選抜できるかもしれないが、中小企業は拾い上げ育てるしかないのである。

企業文化の形成

その会社にとっての必要な人材像を明確にし続けることで、間違いなくそのような人材が育つそうである。なぜなら、その必要な人材像が当人にとって腑に落ちるものであれば、そうなろうとしてかなりの努力も惜しまないからである。難しいのは、必要な人材像を明確にし続けることであり、それを一時のものとして終わらせないことである。
そのときだけの思いつきでやっても、決して腑に落ちるものにはならない。朝礼で1回言ったからいいものでもなければ、ペーパーを配って、ハイおしまいというわけにもいかない。
地道に、日々の仕事の進め方や、会議の場、研修の場を通じて少しずつ浸透させていくしかないのである。だからこそ、それが本当に浸透したときには、人材開発上の必要条件ということ以上にもっと深いところでのモチベーションに繋がっていくのである。まさにこのような取り組みを継続することで企業文化が生まれるのである。
自社にとって必要な人材を明確にすることは、事務的に行うことは容易でも、企業文化を形成するレベルで行うことは容易ではない。しかし、自分たち独自の価値観を共有することは、組織が小さいからこそできることでもある。大企業には、けっしてまねができないこともある。