シリーズ 中小企業にできること・戦略編(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2006年12月号掲載

もはや護送船団はありえない

言葉としては知っていても、理解しているとは限らない。理解していても体感できているとは限らない。
中小企業にかかわる行政の姿勢が明確に変わっているにも関わらず、そのことを自分たちの問題だと認識している経営者は意外に少ない。金融の自由化が進む過程で、護送船団方式が終焉を迎えたということは、広く知られるところとなったが、あくまでも自分たちとは縁のない世界の話としての理解である。しかしながら、この流れは、金融の世界にとどまらず、中小企業行政にも大きく影響を与えているのだ。
これまでの中小企業行政の基本的な考え方は、セーフティーネット重視であり、弱いものを広く掬い上げるものであった。ところが、弱くて革新意欲のないものが生き残ることは、かえって経済効率を落とすものであるとの考え方のもと、全体救済ではなく、意欲のあるものだけを引き上げる政策へとシフトしたのである。例えば、特定不況業種という言葉を耳にしなくなったと思っていたら、「業種法」自体が廃止されていた。安定重視から変革重視の考え方と言ってもいいかもしれない。

知っている人が得をする

現在、中小企業行政の中心をなすのは、「中小企業新事業活動促進法」である。これまであった「中小企業経営革新支援法」「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」「新事業創出促進法」の三つの法律を整理統合したものである。
名前だけ聞くと難しそうである。これだけでアレルギー反応を起こしてしまう方も多いだろう。しかし、幾分面倒くさい手続き行うことで得られるメリットは、予想外に大きい。
ある工場は、最新の設備を導入するにあたって、経営革新計画の承認を申請し、これが認められた。このおかげで、通常よりもかなり低い金利で資金を調達することができた。
現在中小公庫等で融資をうける場合の基準金利は期間10年で2.65%(平成18年10月現在)である。これが申請が認められ、特別利率が適用になると1.75%(同)で融資が受けられるのである。金利にして0.9%、1億円の融資なら年間90万円の利払いの差である。利益が出るかでないかの攻防戦を行っている中小企業にとっては小さくない数字である。
た、設備投資に関わる減税措置が自治体ごとに定められているケースもあり、制度を利用することで固定資産税等の減免を受けることができる。この企業の場合、制度を知っていたか否かで年間700~800万円程度の差異が生じている計算になる。意欲を持ち新しいことに取り組む姿勢を、国が支援するというスタンスが明確に理解できる例かもしれない。
経営革新の申請をするためには、(1)新商品の開発または生産、(2)新役務の開発または提供、(3)商品の新たな生産又は販売の方式の導入、(4)役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動、のいずれかに該当しなければならない。ただし、現状を変えて何かに取り組もうとしたときには、自然とこれらに該当しているものである。当然、判断する担当官によって承認となるかどうかは分かれるところではあるが、新たな取り組みへの覚悟と熱意が、大きな判断材料となっているという話も聞いた。
敷居は意外に低いものである。まずはチャレンジしてみてはいかがだろうか。