シリーズ 中小企業にできること・地域編(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年2月号掲載

格差ではなく差別化へ

前回のレポートで地方の疲弊とその打開策に苦しんでいる街づくりの現場の話をした。確かに万能の活性化策は存在しないが、今回はそのヒントはないか考えてみたい。
都市部と地域の格差の問題を考える上で、多くの分析では、所得面での格差を尺度に進められる。しかし、このギャップを埋める方法やプロセスついては、特に住民の視点から十分な議論が尽くされていないと思われるケースが散見される。
所得面での格差は、言うまでもなく単一の尺度における格差である。経済学でいう所得とは本来効用の代理変数である。平たく言えば、いいなあと思ったり、気持ちよかったり、満足することは、すべて所得水準に置き換えて表現できるという考え方である。
所得水準を高めるためなら、企業や工場を誘致したり、大掛かりな投資プロジェクトを実現したりすることが手っ取り早いが、事業主体の選別も厳しい。しかも住む側にとって街の魅力は一般的な事業の視点だけでは語れない。誰もが思いつつ、実は結果を求めて手段をないがしろにしていることはないだろうか。
進出企業のメリットやビジネスでの需要とともにその地域で生活する者のニーズは言うまでもなく重要だ。本当の目標は地に足のついた事業活動によってその地域が持つ明確な差別化のポイントをさらに伸ばすことにある。つまり地域間の差異を差別化であり特色と捉える視点が必要になってくるのである。

街づくりの秘訣は

たとえば筆者の独断でいわゆる地域興しを大別すると次の二つになると思う。その土地に根ざす行事などをイベント化・施設化して宣伝することで大量の集客を目指す、あるいは土地の「名物」を商品化する「イベント・名物型」(筆者)。もうひとつはその地域にしか存在しない地理環境、気候風土を核にさまざまな工夫で街の洗練に努め、住民と来訪者が協働して地域の個性を見出す「差別化型」(筆者)である。
団塊の世代の消費トレンドを待つまでもなく情報が行き渡り海外旅行が一般化した今日、消費者の本物志向を満足させるのは容易ではない。さる地方の超有名な季節行事が地元からすっかり遊離してしまっている例を知っている。何よりイベント型では事業そのものが最終的にペイするのか、地域活動との共存しかつ継続可能なのか、などトータルでの経済効果を慎重に見定めることが必要なはずだ。企業経営に携わる者にとってはその点がまず大変気になるところである。
ご存知のように近くに別府温泉という大規模な観光地が存在し、それに比べて何もなかった由布院。30年前には典型的なひなびた温泉街だったそうだ。住民は安らぎのために手作りの空間作りにこだわった。都会で見飽きたイベントではなく、あえてその土地だからこその味わいにこだわった。それが、感性鋭い文化人の目にとまり、相乗効果で由布院の名前が日本中を駆け巡ったのである。口コミの効果である。
しかし何よりも、地域の人々が大事に考えていたのは、自分たちにとって住みよい街にすることだったそうである。自分たちにとって居心地が悪い街には誰も寄り付かないと考えたそうだ。ここに大きなヒントがありそうだ。