シリーズ 中小企業にできること・経営計画編(1)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年3月号掲載

戦略的な計画

年度末が近づいてきた。この時期に来年度の経営計画を策定している会社も多いのではなかろうか。かくいう私も、自分の会社の来年度計画を策定中なのだが、毎年のことながら非常に悩むことが多い。
「経営計画は戦略的でなければならない」とよく言われるが、中小企業の経営計画の多くは、前年度実績を参考に各分野で努力目標を何パーセントか掲げるものだ。基本的なオペレーションは、前年度を踏襲していることが多く、戦略的というよりは、毎年同じことの繰り返しに陥る可能性が高い。
ビジネスモデルが安定的で成長が約束されている状況であれば、それほど問題ないのであるが、変革期においては毎年の繰り返しは、陳腐化やマンネリから顧客の満足を得られなく可能性が高い。
自戒の意味も込めて書くのだが、戦略的な経営計画を立てられている中小企業は、意外に少ない。運営上の参考数値としての計画はあっても、変革の時代に適応した戦略思考まで至っているケースは、それほど多くない。
ところで、あらためて戦略的な計画とは、どのようなものか。様々な見解があろうが、私なりにいくつかの条件を考えると以下のようになる。
まず、第一に市場の変化を感じているか。第二にその変化にどのように適応していくかが決まっているか。第三にその対応策は創造的であるか。最後に、その計画は実施可能であるかである。
このように書くと抽象的で中小企業の最前線からは若干遊離したものになってしまうので、少し噛み砕いてみてみよう。

中小企業こそビジョンを

まず市場の変化であるが、言い換えると、お客さんがどう変わったかである。売り上げ上位のお客さんの顔ぶれがどう変わったか、また、同じお客さんでも要求することがどのように変わってきたか、どの商品に期待しているのかを、なんとなくではなく、明確に感じることである。
さらに、同様なフィールドで戦う競争相手がどのような手を打ったかを知る必要がある。
その上で、その変化にどう対応していくかであるが、例えば売り上げが減少したお客様に対して、どう取り組むのか。巻き返しを図るのか、明確な意思を持って減少を認めるのか。決断しなければならない。
さらに重要なのは、自社の商品やサービスがなぜ受け入れられているのか、いないのか?商品やサービスのラインナップは十分であったか。自社のユニークな点はどこなのか。明確に認識する必要がある。
たとえ、結果的に市場に類似した商品・サービスであったとしても、プロセスがユニークでさえあれば独創的といえる。ちょっとした差異でも、差別化の対象となる可能性はあるのだ。重要なのは、自分たちで考えたかどうかである。
そして、自分たちの考え方をまとめていくプロセスにおいて重要なのが、共通のビジョンである。
「やればいいんだろ」的な発想からは、いいものは生まれない。自分たちの共通の目的や達成感の尺度があってこそ、創造的なプロセスを経ることができるのである。中小企業こそ、共通のビジョンが重要なのである。