シリーズ 中小企業にできること・情報化編(1)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年5月号掲載

情報化の障壁は下がっている

中小企業の情報化(IT)投資と聞いて、敷居が高いなあと感じる経営者の方は、多いかもしれない。自分は、コンピューターのことは、さっぱりわからない。あるいは、システム開発というのは多額の投資が必要なのでは?というのが代表的な意見だろう。
確かに、大企業のように自分達の業務フローに合わせて、オーダーメイドのシステムを構築しようと思えば、専門知識を持った専任者の配置や、それなりの投資金額が必要になってくる。ネットワーク化が進展する以前の、集中処理のシステムが主流だったころは、まさに情報化投資は高嶺の花だったろう。
しかし、インターネットに代表されるネットワークが整備され、パソコン自体の性能が高まることで、敷居は確実に低くなっている。ネットを通じて必要な機能だけを使えるASPサービスや、汎用的な業務について効率化を追及したパッケージ型のソフトなど中小企業でもすぐに使えるものも数多い。もちろん、これらのサービスを使いこなしている中小企業もあるだろうが、一般論として、中小企業の情報化は遅れている。その要因は、技術的な要因や資金的な要因と言うよりは、情報化によって業務を効率化したり、新分野に取り組もうという意識の高さの問題ではないかと思われる。
裏を返せば、技術的な要因や資金的な要因が障壁とならないのであれば、過去と比べて現在ほど情報化について大企業との間に差が少ない時代は無いのである。
実際に、インターネットを活用したベンチャー企業も数多く出現しており、会社の大小とネット空間でのプレゼンスの大きさは必ずしも一致しないことは明らかになっている。

個人の利用術に学べ

ただし、ここで注意しなくてはならないのは、同じ中小企業というカテゴリーであっても、インターネットを有効活用できている層と、そうでない層とに、明確に分かれる点である。
この二つの層を分ける要因として、一個人がネットにどれだけ関わっているかが大きな要素になっているように思える。
ある一個人がネット上で新しい可能性にかけてみた、あるいは何かを試してみた・・・と、それがビジネスにつながっていったというのが、ベンチャーのパターンである。そこまでわかりやすい例ではないにせよ、ある中小企業にインターネットに詳しい人が、たまたま存在したか否かによって、その会社のネット上でのビジネス展開は大きく変わってしまう可能性があるのだ。
分散化、ネットワーク化の流れは、大企業とか中小企業という枠組みを一気に飛び越えて、よりパーソナル化した個人レベルでの関わりを最も重要な要素として要求しているように思える。だとすれば、中小企業は、ネットを活用した情報化に関して、個人レベルの利用術に立ち返って考えたときにヒントが見えるのではなかろうか。
単純に自社のホームページを作ればいいというわけではなく、それを使って何をしたいかの意志がより重要になってくる。ツールはあくまでもツールに過ぎず、インターネットが万能薬でないことは、個人の方が知っているようである。
次回は、中小企業がまねしたい、ネットの活用術に迫ってみたい。