シリーズ 中小企業にできること・情報化編(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年6月号掲載

情報化の流れは個人のレベルへ

前回は、中小企業の情報化について、取り組みの度合いにかなりの差が見られる点や、分散化、ネットワーク化の流れは、大企業とか中小企業という枠組みを一気に飛び越えている点について述べた。
現在の情報化の流れが、よりパーソナル化した個人レベルでの関わりを最も重要な要素として要求しているとすれば、中小企業(ベンチャーも含め)にとっては、大きなチャンスと成り得るし、すでに成功を収めている企業も多い。そして、中小企業が学ぶべき個人のネット利用術は数多い。
商品の販売に関わる部分でいえば、ネットショッピングに代表されるイーコマース。コンピューターやシステムに詳しいわけでもない個人経営のお店が月商を数十万円から一千万円レベルまで伸ばした例も数多く見られる。
もちろん、誰でもそううまくいくわけではないが、大手ショッピングモールのキャンペーン等の仕組みを最大限利用したり、親近感のあるメールマガジンで自社サイトに上手に誘導したりと、きめ細かい気配りと、ネット上の特性をうまく生かしている。
検索エンジンにうまく引っかかるようにホームページをカスタマイズする手法や、アフェリエイトといわれる口コミ紹介系の誘導広告など、個人でも利用できるものは数多い。いや、個人だからこそ打ち出せる「人格」が消費者の心をつかみ、口コミとなるのである。その情報は、ミクシィに代表されるSNSを通してさらに、増幅、伝播されることになる。先に述べた個人レベルでの関わりとは、まさにこのことを指しているのである。

人格を持つ事が武器に

ネットという無機質なフィールドだからこそ、人間的な気配りや等身大の人格が貴重なものとなる。ネットショッピングを利用したことのある人ならば、お店側の丁寧な対応や人間性を感じさせる一言にホッとした経験は多少たりともあるのではなかろうか。
ネットの世界の最も大きな特徴が匿名性であるがゆえに、個別、特定、人格といったものが差別化になりえたのである。
これまでのマス・マーケティングでは、一般化がキーワードだった。情報の出し手は、多くの場合、素性の知れたものであり、マスメディアを利用できるというだけで一定の信頼を前提とした情報発信エリートである。情報の出し手は特定され、どこの誰でも情報発信できるネット上の情報発信とは大きく異なる。
同質の情報をより多くの主体に広めることが目的とされたマス・マーケティングでは、情報の受け手は大量に情報発信されていることも承知だし、情報の出し手との親近感など期待していない。もともと、情報の出し手が特定されている世界なので、出し手の個別性や人格を露出することは、ネットの世界ほど差別化にはならない。マス・マーケティングの手法をそのままネットの世界に持ち込んでもうまくいかないのは、そもそも、情報の出し手と受け手の構造が違うからである。
匿名性が原則だからこそ、人格を持つ事の優位性が意味を持つ。情報の出し手に不安を感じるところから始まり、きめ細やかな対応や親近感が武器になるのであれば、ネットの世界で中小や個人経営のお店が生き残るチャンスはまだまだある。