シリーズ 中小企業にできること・活性化編(2)

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年8月号掲載

長期的な成長に必要なもの

革新、チャレンジ、多様化といったものは、中小企業に限らず、長期的な経済の成長には不可欠である点を前回述べた。
このことはまさに、シュンペーターのいうイノベーションが長期的な経済成長にとって必要不可欠である点を、中小企業の視点から再認識したものであった。イノベーションの担い手は、アントレプレナー(企業家)であり、中小企業家の存在意義は、ここにあるといっても過言ではない。前回も述べたように、わかりやすく世間をアッと言わせるほどの新技術や革新でないにせよ、ユニークな取組みの継続こそが企業家の生命線なのである。
何の変哲もない普通の中小企業や中小商店が、よくよく調べてみると100年やそれ以上の歴史を重ねていたなどという例に出会うことがある。歴史を重ねた企業は、一般的なイメージでは保守的で革新とは程遠い存在であるように思われがちだが、その本質は全く逆であることが多い。守るべきものと革新するべきものを知っていたからこそ、100年以上続いたのだ。製造業であれば100年前の技術では、到底成り立たないことは容易に想像がつくし、商店であれば、その間の市場ニーズに的確に対応してきたということになる。進化論を持ち出すまでもなく、革新により最も変化に対応できたものが生き残るわけである。
おそらくこれまでの議論から、多様化が長期的な成長にとって欠かせないものであることを認めていただけると思うのだが、多様化とは効率化の対極にあるものであることも思い出していただきたい。
多様化は、効率を犠牲にし、効率化は多様性を認めない。

多様性を認める懐の深さがあるか

短期的な経済効率の話をしよう。求められるのは、一定期間の付加価値産出額を最大にすることである。金融市場とりわけ株式市場で企業が求められるのは、主にこの観点からである。
無駄を排除し生産設備を効率化する。標準化が求められるため、多様な生産手法は単一なものに収束させる必要がある。取り組む分野は、絞らなければならない。選択と集中が求められ、多様な分野に関わることは、避けなければならない。短期的な観点からは、効率を重んじることが経済成長をもたらす。そして、時としてある特定分野での成功者は限りなく少数であり、かつ巨大な企業である。
このことを都市の成長に置き換えると、一極集中と、それに対しての多様な都市文化の発達ということになる。いうまでもなく、効率を重んじれば一極集中すべきである。価値観が単一の尺度に収束すれば一極集中はさらに加速する。
多様性を認める懐の深さが、価値観の違いや違う発達過程を生み出すのだろうが、経済効率のみを追い求める政策は、このようなモノカルチャー的な結果をもたらしがちである。
シュンペーターは、資本主義の発達は、その成功の度合いが大きいゆえにリスクも大きいと言っている。また、資本主義の発達過程は、不可避的に、小生産者や小商人の経済的基盤を攻撃するとも言っている。
預言書ではないのだが、学生時代にかじった、50年以上も前に書かれた古典を紐解きながら、「中小企業(企業家、起業家)にできること」は、マクロ的にも長期的な成長に非常に重要だと再認識させられた。