格差の是正は地域企業のイノベーションから

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2007年9月号掲載

国全体の成長イメージを

地域間の格差の問題は、政府が認めるか否かにかかわらず、厳然と存在するという認識が広まっている。今回の参院選の結果を受けて、多くの識者が指摘する敗因の一つが地方に対する配慮のなさである。地方の反乱といっても一揆や暴動が起きるわけでもなく、また格差是正により東京と同じレベルまで均一化することを地方が望んでいるわけでもない。まさに、配慮のなさに対しての悲痛な叫びであり、苦言なのだ。短期的な経済成長を優先するあまり、全体の効率化に目を奪われ、地方の可能性や多様性を無視しかねないスタンスは、受け入れられることはなかった。単なる効率化と一極集中がもたらすであろう無味乾燥な一国経済の姿に危機感を感じる人は少なくないということであろう。
結果的に、特に地方の視点から国全体の成長のイメージを明確に示せなかったことが露呈した形だ。国内経済の二極化進行がここまで明確になった以上、ダメなものはダメと切り捨てるだけでは立ち行かない。
東京が良くなればいずれ地方も良くなるだろうという議論は成り立たなくなっている。高度成長期の有り余る需要増大の中で成り立っていたモデルは現在に当てはまりにくい。むしろ東京一極集中と地方経済の衰退はコインの裏表の関係にある。人・モノ・カネが東京に集中する一方で、地方からこれらの経済的資源が消え去っていることを見れば明らかである。一方で、官の力で再分配を行うほど財政的に余裕があるわけではない。おそらく、これまでの価値観では八方塞がりである。地方、中央を含めた国全体が、どのような成長過程をたどるべきかのグランドデザインを議論し、コンセンサスを得る時期に差し掛かっている。

「人」を引き付ける環境作りのための投資を

これまでの価値観というのは、中央から地方へ単純にお金を落とせば、地方が潤うという考え方に代表される。暗黙のうちに中央の価値観を押し付ける考え方であり、結果的に全国に工場や企業が誘致され、街の表情はどこも似たようなものになってしまった。ここには、地方の個性を生かして多様な価値観を育むという思いはなく、単一モデルを全国に広めようという考え方しかない。そこでお金を経済の呼び水にする考えから、その地域に魅力を感じる消費者、やがては定住者になるかもしれない「人」を呼び込むことへと発想を変えてみてはどうか。
高度な新製品の開発に偏ってイノベーションを捉える風潮があるが、新しいサービスの提供のやり方、新しい組織の実現も立派なイノベーションである。わが国では、働き貯蓄する世代よりそれを使って消費する世代が増えている。GDPの内訳でも、海外と凌ぎを削る製造業より第三次産業の方がもう圧倒的に大きい。近年、消費者を取り巻く市場環境は、マスを対象にするビジネスからは徐々に離れつつある。一方で高くてもより洗練されたサービスや商品を求める傾向は明確だ。今地域企業の多様性に富んだ取り組みで、新たなサービス・製品の創出を後押しするコンセンサスづくりが必要である。
地域の特性を生かしたイノベーションにより、高付加価値のビジネスで労働生産性を高めることは、わが国全体の重要な課題でもある。それが地域経済を育み、やがては住む人を引き付けることは想像に難くない。そこで必要なのは自律的な成長を促す環境作りのための投資である。地域に経済的資源を引き留め、自律的な成長を促すためには、この思いを国の政策に反映させると共に、意識的に魅力的な地域企業を作っていかなければならない。