サービス・イノベーションと中小企業

第一生命経済研究所レポート「中小企業アイ」 2008年2月号掲載

サービス・イノベーションとは

サービス・イノベーションとは、サービス産業におけるイノベーションのことである。イノベーションというと、一般的には製造業分野における技術革新をイメージしがちであるが、これまでの述べてきたように本来イノベーションという言葉の意味は、革新や刷新といった意味であり、工業技術的な問題は、必要不可欠なものではない。
サービス業の特性としては、生産と消費が同時に発生する同時性、蓄えておくことができない消滅性、手に触れたり見たりすることができない財(Intangibles)であること等があげられる。しかし、ここでとりわけ注目しておきたいのは、新規参入が容易であり中小企業が多い点である。まさにこの点が中小企業にとっても日本経済にとっても重要なポイントである。
今回の景気回復では非製造業中小企業の景況感の回復が最も鈍かったわけだが、就労者ベースでみた場合のボリュームゾーンが非製造業中小企業であることを考えると、景気回復を実感できない理由がよくわかる。
GDPベースで7割に迫る付加価値を算出するサービス産業の生産性の伸びが低いことを国も問題視しており、2006年7月の経済成長戦略大綱のなかで「サービス産業生産性協議会」を発足させ、2007年4月には、「サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて」と題した報告書が出されている。
サービス産業では、これまで体系的な開発プログラムが一般化されることは少なかった。いわゆる経験と勘によるサービスの提供が主流だったわけだ。しかし、同種のサービス業の間でも目に見えない要因によって、業績や成長に格差がついていることは周知の事実である。その見えない要因を革新することがサービス・イノベーションである。

新しいアプローチ

一言で見えない要因といってもそれこそ曖昧である。見えない要因を可視化(見える化)することが最初の第一歩であり、そのために科学的・工学的アプローチやサービスプロセスの改善が求められる。
日本では一般的ではないが、米国ではエアラインの搭乗時間の最短化やMLBのスケジューリングなどに実用されている。メジャーリーグの試合数は1チームあたり162試合、全2430試合である。ホームタウンからの移動回数、試合の配列、ロード旅程の短縮化などを考えて公平なスケジュールを人手で行うのは大変である。これを数理的に最適化することで必要人員・機材、コストを最低限に抑えたスケジューリングが可能になる。
日本でもイノベーションや生産性向上に役立つ先進的な取り組み(ベストプラクティス)を行っている企業を公表・表彰する仕組みとして「ハイ・サービス日本300選」の選定が始まった。一例として、タクシー会社の例をあげておこう。この会社は、これまで確率や勘に頼っていた「流し」のタクシーについて、統計的な分析に基づくノウハウ抽出・共有を実施し、大幅な効率化に成功した。具体的には、売り上げの高い優良乗務担当社員の運転軌跡をGPSデータとして記録、データマイニングによって行動パターンを抽出しているというものだ。成熟産業と言われ、生産性向上が困難と思われる分野でも工夫次第でまだまだ改善の余地があるという好例ではなかろうか。なお、「ハイ・サービス日本300選」については以下のホーム・ページで詳しく見ることができる。

http://www.service-js.jp/cms/page0600.php