景気回復の実感は?

「仙台経済界」2000年11-12月号掲載

 「景気は緩やかに回復している」と言われているが、地元商店街はどうであろうか? 日銀が10月上旬に発表した「短観」によると、大企業・製造業の業況判断が+10(6月調査+3)と改善したほか、大企業・非製造業が▲9(6月調査▲12)、中小企業・製造業が▲17(6月調査▲21)、中小企業・非製造業は▲24(6月調査▲27)と回復傾向を示してはいる。しかし、中小・非製造業の景況感の回復は鈍く、景気が回復しているといえるのは、大企業製造業に限った話と見ることもできる。
 いうまでもなく、地元商店街は中小の小売業者を中心に構成され、短観の分類上は中小企業・非製造業に属する。(政府の言う)景気回復が始まってから1年以上が経過しているにもかかわらず、中小企業・非製造業の今年度の売上計画はマイナスにとどまっており、当面の回復が見込み難い状況にある。単純な景気循環であれば、景気が回復すれば、一応に恩恵を受けることも期待できるのであるが、今回の景気回復局面は、そう簡単なものでも無いようだ。
 むしろ、今回の回復局面において大企業・製造業と中小企業・非製造業の景況感の差は広がっている。回復を実感できる層とそうでない層の二極化が広がっているのだ。両者の違いはどこからくるのだろうか。その差は、大企業製造業がどの分野で好調かを考えればわかるはずである。好調を牽引しているのは、携帯通信、パソコン等に代表されるIT(情報技術)関連の企業である。最終財のみならず電子部品関係でもやはりITがキーワードになっている。IT…革命とさえ呼ばれるこの技術革新の波をいち早くとらえたのが大企業・製造業であり、その波にどう乗って良いのか思案中なのが中小・非製造業なのかもしれない。
 新しい波をうまくつかめたか、そうでないかという観点は、なにも今回に限られた特別なものではない。そして、変化が激しい時代には、波に乗り遅れること自体が命取りになりかねない。情報通信技術やデジタル化の流れは、加速することはあっても後退することは無いだろう。今後は、中小非製造業の中で景況感の二極化が顕在化し、情報戦略への取り組み方の違いが一つの分水嶺になることが予想される。
 これまでの景気回復のように、誰もが景気回復の恩恵を享受できる時代は、終わった。これからは、自己改革と情報武装をした小売り業者が勝ち残る形の厳しい景気回復になることが予想される。気づいてみたら世の中は、景気回復と言っているのに、自分たちだけがその実感を享受できないということになりかねない。
 地元の中小小売業者の間にもいくつかの試みが見られ始めた。この取り組みの差が2年後にどのような差になって現れてくるか見守っていきたいと思う。